雨がポツポツ、すぐ止みそうだけど微妙な天気。田中さんと歩き出して間もなく登山口へ。そしてすぐに急な登り坂、どこまでも続く登り坂、ここも有名な遍路ころがし。
僕らより先に民宿を威勢よく出ていった30代くらいの男性、少し登った辺りで座り込み、あいさつする声も息が上がっていた。朝一での山登り。体はまだ目覚めていないので途端に汗が噴き出す。呼吸を整えながら歩を進める。山道はペースが違うので先に行かせてもらう。
20番鶴林寺までは標高差500mの登り。距離は短い分傾斜はきつい。21番太龍寺へは一端下ってまた登る。階段の登りが続き太股がだるくなり鼓動も速くなる。山門の手前数百mは舗装道の急坂で、まっすぐ歩けず斜めに登った。
太龍寺に着く頃にはすっかり雨。雨の中の参拝。本堂で拝んでいるとお寺の人が「そこの階段下の売店でお茶が飲めますよ。」と教えてくれた。ここにはロープウェイが通っていて、どっちが正面だかわからないくらい立派な石柱が建っている。
見回してみると、境内は樹齢数百年の杉などの巨木に囲まれている。標高600mにある札所には霊気が漂い、深い山の威厳を感じる。
売店で梅茶のお接待を受ける。これが美味。ついでに餅入り栗パンを買って食べた。心身共に回復。田中さんが梅茶をもう一杯もらってきてくれた。元気になったところで22番平等寺へ。
いきなり急な下りが始まり途端に膝が痛くなる。田中さんが「後ろ向きで歩くといいよ。」と教えてくれた。真似してやってみる。コツをつかむと確かにこれはいい。この日以降舗装道路の下りで膝を痛めることはなかった。ただ下りは勢いがついていてすぐには止まれない。車が後ろから来たので急いで脇に避けた時も、パッと立ち止まろうとしても意識は前に進んでいる感覚になるのでバランスが崩れてしまう。田中さんは止まりきれず本当に山壁の方に転んでしまった。こんな感じで一気に下って県道へ。
山の岩をショベルカーで削り落とす現場の横を通り、再び山道へ。また石段。どこまで続くんだと思いながら登る。登りきると下り。ここの下りは緩やかで歩きやすい。特に竹藪の中、笹の落ち葉が敷き詰められた遍路道はサクサクと音が鳴り、気分も快適だった。でも蜘蛛の巣にやたら引っかかって、そのたび足を止めて蜘蛛の巣をとる。これは不快だった。
下りきると平坦な道。田畑の間を通っていく。畑仕事から帰るおばあちゃんとあいさつをしながら平等寺に着く。納経を済ませ腰を下ろすと疲れがドドーっと出てくる。今日もハードな道だった。しばらく立てずに休憩していると田中さんも到着。
すでに4時半。近くの宿は部屋がいっぱいになってしまったらしく、他に宿はない。その先は20㎞行かないとない。思考回路が停止した。もう疲れた~。
田中さんは明日の午前中には帰らないといけないので、20㎞先の日和佐駅まで電車で移動。歩き遍路なのに20㎞も電車に乗るのは躊躇したけど、旅は道連れということで、一緒に阿波一国打ちの結願を祝うことにする。
もう1人ここで会ったお遍路さんと3人で駅へ向かう。途中は田中さん達に道を任せて後ろを歩いた。駅までも随分遠くに感じた。電車に乗って外を見ると、当たり前だけど速い。流れる景色が速過ぎる。乗り物は本当に便利だと思いながらも変な感覚がした。
もう1人の人は駅前のビジネスホテルなので別れ、僕らはみゆき旅館に。5時半過ぎてから電話したのに食事付。仕出し屋も兼ねているようで助かった。大広間で大きい座敷テーブル。豪華な料理で体力もかなり復活できた。
店と部屋は別の建物で少し離れていた。元気も出て来て、田中さんの部屋で12時頃まで話をした後、リュックを縫って補強した。安かったのはいいけど、最後までもつか心配だ。
それにしても、色んな解説本などに書いてある遍路ころがし。読んでイメージするのと実際歩いてみるのでは随分違った。ナメていた訳ではないけど、プラスαで転がった。
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