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9月19日 2日目 約27km

5時半起床、6時からお勤め。宿泊客は僕1人だったのにきちんとお勤めをさせていただいた。緊張したけどお経をあげた後住職さんと話をして「頑張ってください。」と励ましの言葉をいただいた。静かな朝だった。

夕べと同じ部屋での朝食。おひつのご飯も全部いただきました。

出発の準備をしながら、しばらく菅笠をどうしようか考えた。リュックの脇のベルトを菅笠の骨組みの部分に通してからロックしたらうまく固定できた。これで風が吹いても大丈夫そうだ。

白衣を着てリュックを背負い、窓ガラスに薄く映っている姿をしばらく見ていた。急に遍路姿が似合わない、カッコ悪いという気になり、外に出るのが億劫になってしまった。出発まで時間がかかった。

 

3番に行く道はあぜ道が多い。遍路道らしいなと思った。道端にバッタやカマキリを見ながら、最後にお墓の間を抜けて金泉寺に着く。境内には山門からではなく横から入ってきた。ここでいいの?と思い、山門を出て石柱を確認した。今日は時間がたっぷりあるような気がして、仏像の写真を撮ったりしながらゆっくり過ごした。

納経所で話しかけられた。「歩きですか?」「今日も暑いですね。」というような普通の会話なのだけど、遍路として会話が出来ているんだと思った。まさか納経の後で話しかけられるなんて考えてもいなかったので、ギクシャクした返答になってしまったけど、ひとりの遍路として見てもらえたのが嬉しかった。

 

山門を出てから商店街を抜けると、窓ガラスに道案内の張り紙がしてあるお店が数軒あり、矢印なども書いてあって歩きやすかった。途中道路沿いに愛染院という別格の札所があった。参拝すべきかわからないけど、休憩も兼ねて寄ってみた。山門の辺りに犬が2匹寝ていたけど、苦手なので起こさないように静かに通り、小声でお経をあげた。

さらに道なりに進むと十字路に来た。そろそろ右折するはずだけど遍路シールが見当たらないので、きょろきょろしながらまっすぐ歩いていると、少し離れた柿畑から「おーい、こっちこっちー。」とおじいちゃんが教えてくれた。お礼を言って通り過ぎそのまま行くとお寺が見えた。よかったー、到着。と思ったら5番地蔵寺に来ている。5番ってなんで?近くにいたお遍路さんに聞いてみたら、どうもさっきの十字路で右折するのが正しかったようだ。

約5kmのロス。ただでさえ上り道なのに、道を間違えた分は余計に足取りも重くなった。4番大日寺へ続く長くてゆるい上り坂は、まっすぐでなかなか前に進まない気がした。遠くに大日寺らしきお寺が見えてからも長かった。

ゆっくり歩いていると、途中からトンボが左肩に止まってきた。トンボが自分の体に止まるのは初めてのことで、手で振り払うのも悪い気がしてそのままにしていたら、大日寺の山門に着くと飛んで行った。肩を落として歩いていたから励ましてくれたのかも。これも同行二人。

同じ道をたどり5番地蔵寺へ。ここにはガイドブックにも紹介されている五百羅漢のお堂がある。せっかくだからと思い拝観した。受付のおばさんに親切丁寧に話しかけられ、ここでも遍路として受け入れられているんだと思い、安心した。

 

その後は昼食がとれる所を探しながら県道を歩く。でもなかなか店がなく、小さい食料品店のベンチで休憩。靴を脱いで休んでいたら、中からお店の人が出てきて少し話をした。しばらく県道に沿って行くとセルフのうどん屋があった。遍路姿で一般のお店に入るのは初めてだから緊張した。店内には作業服を着た男性や親子連れのお客がいた。セルフの店にも慣れていないし、しかもこの格好と荷物。恥ずかしかったけど平静な振りをしていた。でも地元の人には珍しくないのだろうと思うと少しは気が楽になった。うどんの方はしっかりと噛みごたえがあり、だしはあっさりでとても美味しかった。店内でつながっている隣の店でウィーダーインを買う。明日の焼山寺までの非常食。

 

6番安楽寺7番十楽寺と相変わらず写真を撮りながら進む。十楽寺の駐車場で初めて他のお遍路さんと立ち話をした。奥村さん(24才女性名古屋)とは4番以降すれ違ってはあいさつをしていたけど、やたらすれ違うのにあいさつばっかりだと、またか、みたいに思ってしまう。この先も会釈だけではおかしい気がして話しかけてみた。とは言っても会話は長く続かないし、最後には納め札の交換をしてみたけど、初対面でも交換したほうがいいのか、しないでいいのかもわからず、ギクシャクして初コミュニケーション終了。もともと話すのは苦手だから、とっさの会話ではいつも後悔する。もっとこう話せばよかったなと後から浮かんできたりして。

 

歩くペースは違うと思い、8番へは先に向かうことにした。というかこの上一緒に歩くのはつらいなと。基本は1人が好きだし、人に合わせることもわりと上手に出来るのだけど、途端に自分が消えていってしまう。本当は下手なのだろう。

しばらく行くと道路脇のビニールハウスから「お遍路さん、休んでいきなさい。」と声がする。中に入るとおばあちゃんがお接待してくれた。ヤクルトにお茶にぶどう。箱の中には近所のお年寄りの方々が作られた小物類がたくさん入っていて、どれでもどうぞと言われたので巾着袋をいただいた。

もう一人側にいたおじさんの話はとても長く、なかなか立ち上がることも出来ずに長居してしまった。「どうして歩こうと思ったの?」と聞かれた時は「ちょっと体を壊して会社を辞めたので。」としか答えなかった。詳しく話す気にはならなかった。

 

途中から加わっていた奥村さんと歩き出す。すでに奥村さんは足が痛いらしく、時々立ち止まっては足を伸ばしている。先に行くのは悪いかなと思い、一緒に歩くことにした。

 

8番熊谷寺。やっと着いたと思いながら建物の中に入りお経をあげようとしたら、ここは納経所だとおばちゃんが教えてくれた。夕方になり肩も足も疲れていて、この建物が何なのか確認することも忘れていた。参拝するにはさらに駐車場を越えて階段を上って行かないといけない。そんなに距離はないけど遠く感じた。

そして納経を済ませたところで今夜の宿、民宿坂本屋から電話がきて「今どこ?早く来て。」と催促された。まだ早いでしょと思いながら時計を見ると、納経所が開いている5時までには9番法輪寺が限界、10番は無理。というか9番すらヤバイ!奥村さんとは宿が一緒だったので、納経帳を預かって先に9番へ向かう。

 

黙々と早歩きで進み、ラスト600m位は走った。はたから見ればジョギング程度にしか見えなかったのだろうけど、頑張った。荷物も重いし足の付け根も痛い。山門をくぐると5時の3分前、なんとかセーフだ。すぐにもう一人来ますからと言って参拝の前に納経をさせてもらい、落ち着いてから本堂と大師堂を参拝した。

坂本屋に電話をすると「もう一人の方を迎えに行くから待ってて。」と言われた。断ることも出来ずに早くも完歩断念。約3km車で移動。田んぼの間を走っていく軽自動車の後部座席で揺られながら、民宿まではまだこんなにあったのか、疲れた~と思いながら、ボーっとしていた。

 

坂本屋に着くと、他の宿泊客は食事もお風呂も済んでいた。2人で天気予報を見ながらの食事。若い女性と向かい合わせで緊張し、疲れと完歩が出来なかったショックも重なって、食事がなかなか喉を通らなかった。

お風呂にはシャンプーがなく石鹸で髪を洗う。お湯は熱くて気持ち良く、夕方の風で冷えた体を芯からほぐしてくれた。風呂上がりには、早速足にマメができてしまったので、針で水を抜いて2日目終了。明日は遍路ころがしと呼ばれる険しい山歩きがある。近くまで来ている台風が気になる。



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